2012年度の公開講座

第1回公開講座

「脳を裁く。脳で裁く。 —– 精神鑑定の現在と近未来 —–」

日時: 2012年5月26日(土) 18:00~
場所: 慶應義塾大学 信濃町キャンパス 3号館北棟1階ラウンジ
演者: 村松 太郎

「悪」には罰を。「病」には治療を。有史以来、人間社会で維持されてきた二分法です。けれども、あらゆる精神現象が脳の機能の表れである以上、「悪」と「病」に明確な境界はないはずです。精神医学ないしはニューロサイエンスの進歩に伴い存在感を急激に増してきたこの事実は、刑事精神鑑定という局面で否応なく露呈しています。それは裁かれる被告人にとっての有罪・無罪を分岐しかねない重大な問題であるにとどまらず、人類全体にとって、社会を維持するための道徳という概念そのものを揺るがす根源的な問題でもあります。精神鑑定の実際を紹介することによって、この科学と社会の生々しい接点について論じるのが5月26日の公開講座です。

第2回公開講座

「集団精神療法」

日時: 2012年6月23日(土) 18:00~
場所: 慶應義塾大学 信濃町キャンパス 3号館北棟1階ラウンジ
演者: 嶋田 博之

欧米の精神科医療では様々なグループが活用されているように思うのだが、それに比べて日本ではまだ今ひとつマイナーな感じがする。個が重視される米国で様々な治療的グループが展開しているのに対して、集団の和を重んじる日本で集団精神療法がメジャーになっていないのは興味深い。今回はそうした比較文化論的な話をする訳ではないけれど、とにかくグループというこのパワフルな治療資源を活用しきれていないのは、何とももったいないことだと思っている。
当日は、グループの話あれやこれやに加えて、ちょっとしたグループ体験も出来ればと思っている。

第3回公開講座

「Successful Aging —– 「よく老いる」とはなんだろう —–」

日時: 2012年7月28日(土) 18:00~
場所: 慶應義塾大学 信濃町キャンパス 3号館北棟1階ラウンジ
演者: 新村 秀人 医師(精神神経科学教室 助教)

「老い」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。物忘れが多くなる、体力が衰える、病気に悩む、話し相手がいなくてさびしいなどネガティブなものが多いかも知れません。しかし、最近では、生き生きとした元気なお年寄りも増えてきました。超高齢化社会に入ったわが国では、老いは誰もがかかわる過程です。
「よく老いる」を考える概念として、サクセスフル・エイジングが提唱されています(アンチ・エイジングとは、ちょっと違います)。老いに立ち向かうのではなく、老いの中にも成長の過程があるととらえ、老いの肯定的な側面に注目していこうというのです。
当日は、サクセスフル・エイジングの概念について紹介するとともに、感情や認知とサクセスフル・エイジング、精神疾患とサクセスフル・エイジングについても考えてみたいと思います。

第4回公開講座

「禅の思想を取り入れる-マインドフルネスにみるうつ病の再発予防-」

日時: 2012年8月25日(土) 18:00~
場所: 慶應義塾大学 信濃町キャンパス 3号館北棟1階ラウンジ
演者: 佐渡 充洋 医師(精神神経科学教室 助教)

うつになるとき、人の意識は「過去」と「未来」に集中し、「現在」にこころがありません。「なぜあんなことをしてしまったのだろう」と過去を後悔し、「うまくいかなかったらどうしよう」と未来を案じます。そして、寝ても覚めてもこれらの後悔や不安がグルグルと頭の中を駆け巡るようになってしまいます。このように思考が「反芻」し始めると、思考で作り上げられた悲観的な現実を「本当の現実」と捉えてしまい、気分が沈み、バランスのよい対応がとれなくなり、状況が益々悪化してしまいます。
このような状況に対処するための方法として近年注目を集めているのがマインドフルネス認知療法です。これは、禅の瞑想などの手法を取り入れた一種のメタ認知のトレーニング法です。過去や未来でなく、現在に注意を向ける練習を通じて、自分の考えや感情に巻き込まれず、現実に適切に対応できることをめざします。
当日は、マインドフルネス認知療法の効果の機序を説明するとともに、簡単なエクササイズを通じて、マインドフルネスがどのようなものか体験していただこうと考えています。

第5回公開講座

「働いて元気になる! ~新しい就労支援の方法IPS~」

日時: 2012年9月8日(土) 18:00~
場所: 慶應義塾大学 信濃町キャンパス 3号館北棟1階ラウンジ
演者: 中谷 真樹 医師(住吉病院 院長)

精神の障がいを持つ方とそのご家族にとって、働くことは、リカバリー/回復のためにとても大事なことだと考えられています。自分の望む地域で生活し、社会での新しい役割を獲得し、精神保健が提供するサービスへの依存を減らしていくために有効だと考えられています。しかし、多くの方は精神的な病いを持ったことで、働くことをあきらめてしまうことを余儀なくされています。
IPS(Individual Placement and Support) は、米国で1990年代前半から開発された、就労支援に焦点を当て開発されたプログラムで、科学的に効果的であると証明された事実や根拠に基づいた援助プログラム (EBS: Evidence Based Plactice)のひとつです。
私どもの法人は山梨県甲府市にあって精神障がいをお持ちの方が働くことを応援しています。私どもはは多くの方々と一緒に働いたり、働いている方々の笑顔を見ているうちに「病いがあっても働ける」ことを信じるようになりました。働いて元気になるための有効な応援法であるIPS援助付き雇用について一緒に勉強いたしましょう。

第6回公開講座

「精神科トランスレーショナルリサーチ」

日時: 2012年10月27日(土) 18:00~
場所: 慶應義塾大学 信濃町キャンパス 3号館北棟1階ラウンジ
演者: 田中 謙二 医師(情動の制御と治療学研究寄附講座 特任准教授)

精神科医が何故基礎研究をするのだろうか?人のこころを理解するために基礎研究は必要なのだろうか?ましてや動物実験で何がわかるのだろうか?人を用いた研究で最も進んでいるのがヒト遺伝学と脳機能イメージングであり、新たな知見が次々と発表されている。ここで得られた結果をさらに推し進めて因果に迫る研究を行うにはどうすればよいのか?このような視点から精神科トランスレーショナルリサーチについて述べる。発表者が使っている革新技術、オプトジェネティクスを紹介し、この技術が精神科トランスレーショナルリサーチをどのように変えようとしているか自身のデータを交えて述べる。

第7回公開講座

「精神科医の海外留学」

日時: 2012年11月24日(土) 18:00~
場所: 慶應義塾大学 信濃町キャンパス 3号館北棟1階ラウンジ
演者: 内田 裕之 医師(精神神経科学教室 専任講師)

海外留学は楽しいです。今回の公開講座の目的は1人でも多くの人に、留学をする、と決心してもらうことです。自身の経験を中心に、どのように留学の準備を進めるのか、どんな生活が待ち受けているのか、帰国後にどのような展開がありうるのか、についてお話させていただきます。

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