児童精神医学研究室

児童精神医学について

乳幼児から思春期までの子どもを対象とした精神医学である児童精神医学には、成人の精神科臨床と異なる点がいくつか存在します。子ども特有の疾患があることもそうですが、発達段階に応じた評価を実施する必要があること、非言語的コミュニケーションが重要であること、また様々な症状を養育者等との関係性の文脈で評価をする必要があること、などがその特徴としてあげられます。また、子どもは可塑性が高いため、その健康的な側面に働きかけていくという「成長を支える」視点を持つことが重要となります。

子どもと大人には連続性があり、精神疾患の多くは児童青年期に始まっています。最近注目されることの多い発達障害に限らず、不安障害、気分障害、統合失調症、パーソナリティ障害の診断、治療においても児童精神医学の理解は重要です。

当研究室について

児童精神医学研究室の特徴は、自律して研究活動を行うことが出来るばかりではなく、日本ではなかなか研修機会の少ない児童精神医学領域において高い臨床能力を有する医師の養成を目指している点です。

児童精神医学の領域ではBio-psycho-social 全てのアプローチを行う必要があるため、我々の研究及び臨床の関心領域も多岐に渡るという点もこの研究室の特徴と言えるでしょう。それを反映して、現在の参加メンバーも医局内の他の研究室(心理研究室や精神薬理研究室など)との掛け持ちをしている者も少なくありません。

日本精神神経学会、日本総合病院精神医学会、日本児童青年精神医学会、日本思春期青年期精神医学会、日本精神分析学会、日本臨床精神薬理学会等の学会にて積極的に活動をしています。

研究会や活動について

現在の児童精神医学研究室の柱の一つ、前述した優秀な臨床医の養成を目的とした活動としては、現在、隔月の症例検討会と毎月の系統講義が行われています。 通称・CAP研(Child and Adolescent Psychiatry研究会)と呼ばれる症例検討会では、児童精神科に関する症例についてBio-psycho-social全ての観点から詳細に検討しディスカッションを行っています。隔月に開催しており、最近では同窓会員の参加も可能となりました。

毎月の系統講義では、平成28年度までは後期研修医を対象に、アメリカにおける児童精神医学専門医試験レベルの知識の獲得を目指して約1年をかけて主な領域をカバーするという方針で行われました。平成29年度からは全ての同窓会員を対象とし、講義の目標を一般精神医学の知識や経験を持つ精神科医のための児童精神医学講座という形に変えて実施しています。
研究活動としては、各メンバーが主に児童精神科分野での臨床研究を進めており、学術集会における発表などを行っています。

既に各メンバーが著した書籍や翻訳本も数多くありますが、今後当研究室としても、欧米の文献の翻訳/出版活動を行っていく予定です。