心理学研究室

我が国の精神分析を長年に渡って牽引した故・小此木啓吾先生によって発足した当研究室は、精神分析の伝統を大切にしながら、精神医学・心理学の発展と社会のニーズにこたえる形で発展し、現在の研究室メンバーは、精神分析、精神分析的精神療法、認知行動療法、家族療法、集団精神療法、対人関係療法、マインドフルネスなどの幅広い精神療法をカバーするようになっています。活動領域も、精神科臨床にとどまらず、産業保健、学校保健、自殺対策、身体疾患のケア(リエゾン精神医学・緩和ケア)、医療従事者のメンタルヘルスなど多岐にわたり、精神療法的な考え方を応用しながら、実践、教育、研究を行っています。研究室では精神療法家の育成にも力を入れており、トレーニングとして、事例検討会、抄読会、スーパーヴィジョンが挙げられます。

これらの活動は、多くの研究会や研究室とのゆるやかな連携によって行われており、その中には本研究会から発展的に独立した研究室も含まれています。

リンク:児童精神医学認知行動療法マインドフルネス&ストレス研究センター緩和ケアセンター

研究会・勉強会

医療関係者を対象に心理研究会では精神力動的療法や精神分析的精神療法について、抄読会(第1金曜)や症例検討会(第3金曜)を通して、Web形式で研鑽を積んでいます

拡⼤抄読会 「ベイシック・フロイト」を読む
2020年9⽉から、毎⽉第1⾦曜⽇ 19:00-20:30に、「ベイシック・フロイト」岩崎学術出版社を抄読しています。

お問い合わせ

ご興味のある方はこちらのお問い合わせフォームでご連絡ください。心理研究室への執筆・講演依頼もこちらからお願い致します。

最近の活動報告

⼼理研究室拡⼤研究会(⾦曜・⽊曜研究会合同研究会)

「不安について、精神分析的に考える」

演者:平島 奈津⼦先⽣ (国際医療福祉⼤学⼼理・医療福祉マネジメント学部⼼理学科教授 国際医療福祉⼤学三⽥病院精神科)
座⻑: 林 公輔 先⽣ (学習院⼤学⽂学部⼼理学科 准教授/群⾺病院精神科)

抄録:合同研究会初の WEB 開催でした。
『いま、未知の感染症を前にして、誰もが不安の波にのまれそうになる中、氾濫する情報に圧倒されて
「思考する⼒」が奪われていくように感じることがあります。精神分析的な思考は、傍観者の俯瞰的な思考ではなく、当事者として関わっていく中で⽣まれる情緒的な思考です。息のつまる⽇常に、深呼吸するような気持で、不安について考えてみたいと思います。』という、平島先⽣による事前告知⽂に表れているように、不安という現象を、ご著書「不安のありかー“私”を理解するための精神分析のエッセンス」(⽇本評論社)の⼀部を引⽤されながら、精神分析的に幾層にも重ねて語ってくださいました。

「子供の精神分析 自閉症の子どもとの間に生まれた情緒交流-精神分析的関わりのプロセス-」

演者:森さち子先生 (慶應義塾大学総合政策学部教授 医学部兼担教授)

抄録:外界から心を閉ざし、言葉による交流が難しい子どもの心の世界に、精神分析的な理解に基づいて関わっていった過程をビデオ録画を用いて共有していく。とりわけ、ほどよい距離感、boundary、emotional availability、affect attunement、自己調整、身体接触をめぐる葛藤と配慮、転移・逆転移などに注目しながら、そのプロセスを振り返る。また、そうした言葉以前の交流、すなわち精神分析における技法である「言語的解釈」以外の前言語的交流が、大人の精神分析的心理療法においても共通して重要なテーマであることを取り上げる。

「Suffering and mental pain - new concepts in European psychiatry」

演者:Dr. Stefan Büchi(前・チューリッヒ大学教授.医師・医学博士)

抄録:Büchi先生はスイスで最も質の高い治療が実践されていると定評のあるHohenegg病院(Psychiatrische Privatklinik Hohenegg)の責任者です。Büchi先生が京都大学の訪問教授として日本に短期滞在なさる機会を活かし、八事病院理事長の水谷浩明先生(慶應精神神経科医局員)のご支援と、当研究室の林公輔先生のご紹介で研究会開催が実現しました。
Büchi先生は、病気の人生に占める位置づけをビジュアルで評価するPRISM (Pictorial Representation of Illness and Self Measure) というツールを開発し、精神疾患・身体疾患のメンタルケア、最近は自殺リスクの評価に応用しているそうです。

  • 慶應精神分析⽊曜研究会(精神分析学会認定研修グループ)(⽇本臨床⼼理⼠資格認定協会、定例型研修会)をWeb開催で行っています

最近のプロジェクト

研究室メンバーが関与した書籍(一部抜粋)

  • 公認心理師の基礎と実践第22巻 精神疾患とその治療-精神疾患の治療システムとその背景.遠見書房2020
  • 精神力動的精神医学 第5版―その臨床実践 岩崎学術出版社2019
  • ワークで学ぶ認知症の介護に携わる家族・介護者のためのストレス・ケアー認知行動療法のテクニック.金剛出版2019
  • がん患者におけるせん妄ガイドライン2019年版.金原出版株式会社2019
  • マインドフルネスを医学的にゼロから解説する本.日本医事新報社.2018
  • 救急医療から地域へとつなげる自殺未遂者支援のエッセンス:HOPEガイドブック(へるす出版)
  • 子どもを持つ親が病気になった時に読む本:伝え方・暮らし方・お金のこと.創元社2018
  • 精神科レジデントマニュアル(医学書院)2017
  • 緩和ケアレジデントマニュアル(医学書院)
  • ミーニング・センタード・サイコセラピー:人生の意味に焦点を当てた精神療法.河出書房新書2017
  • 認知行動療法実践テキスト:基礎から応用まで.星和書店2015
  • がん患者心理療法ハンドブック.医学書院.2013
  • 自傷行為救出ガイドブック-弁証法的行動療法に基づく援助.星和書店2011
  • 短期精神療法の理論と実際.星和書店.東京.2011

研究室メンバーが関与した論文(一部抜粋)

  • 乳がん患者対象のマインドフルネス認知療法:ランダム化比較試験
    Mindfulness-Based Cognitive Therapy for Psychological Distress, Fear of Cancer Recurrence, Fatigue, Spiritual Well-Being, and Quality of Life in Patients with Breast Cancer - A Randomized Controlled Trial. J Pain Symptom Manage. 2020; 60(2):381-389.(2017年 日本サイコオンコロジー学会 優秀ポスター賞)
  • がん患者のスティグマに関する研究
    Cross-cultural validation of the Cancer Stigma Scale in the general Japanese population. Palliative and Support Care. 2020 Jul 1:1-7.
    Prevalence and associated factors of perceived cancer-related stigma in Japanese cancer survivors. Japanese Journal of Clinical Oncology. 2020: Online ahead of print.
  • 救急外来受診者の自殺再企図の予測因子
    Predictors of short-term repetition of self-harm among patients admitted to an emergency room following self-harm: A retrospective one-year cohort study. Psychiatry Res. 2017; 258: 421-426.(2018年日本総合病院精神医学会国際論文賞)(学位論文)
  • 肝移植ドナー・レシピエントの心理的問題への認識ギャップに関する研究
    Discrepancy in Psychological Attitudes Toward Living Donor Liver Transplantation Between Recipients and Donors. Transplantation. 2015; 99:2551-5.(学位論文)