社会精神医学研究室

はじめに

精神科医療には、包括的な視点とアプローチが求められます。診察室で患者さんの話を傾聴して適切な薬剤を処方すれば、精神症状は改善するかもしれませんが、日常生活、人間関係、就学や就労など、患者さんの生活全体を回復していくためには、生物学的-心理的-社会的(Bio-Psycho-Social)な視点に立った、包括的で統合された治療が必要です。当研究室では、これらの治療の基礎となる研究に取り組むとともに、エビデンスに基づいた包括的治療を実際に地域社会で展開しています。

また、わが国で高齢化が進むなか、精神障害者における高齢化や高齢者・超高齢者のメンタルヘルスについてもコホート研究により検討しています。

「リカバリーのためのワークブック-回復を目指す精神科サポートガイド」

(水野雅文、藤井千代、佐久間啓、村上雅昭編. 中央法規, 2700円)が2018年6月に刊行されました。 精神疾患からの回復(リカバリー)、地域で自分らしい生活を送るのに必要は視点をまとめた当事者・家族・治療者のためのツールで、ワークシートを多数収載。使い方をわかりやすく解説し、さまざまな臨床場面で役立てられます。

勉強会

精神科臨床で気になるトピックスや技法をワークショップ形式で勉強します。若手医師対象としてはおりますが、中堅・ベテランの参加も歓迎いたします。

2018年度
第1回 5月8日「先生、きちんと心理教育できますか:心理教育概論」(大泉病院 山澤先生)
第2回 7月10日「明日から使えるCBT的介入:「リカバリーのためのワークブック」を使ってみよう」(慶應義塾大学医学部精神神経科学教室 新村)
第3回 9月25日「早期介入」(慶應義塾大学医学部精神神経科学教室 鈴木先生)
第4回 11月13日「ASD診断の現状と今後の課題」 (金沢大学子どものこころの発達研究センター 特任准教授 熊崎先生)
第5回 2019年1月29日「精神疾患とスティグマ」 (聖マリアンナ医科大学病院 神経精神科助教 小口先生)
第6回 3月12日「地域移行支援」(慶應義塾大学医学部精神神経科学教室 喜田先生)

拡大勉強会

臨床の第一線でご活躍の先生にお話を伺う講演会です。

① 6月12日 鈴木映二先生(東北医科薬科大学病院 精神科教授)(大塚製薬)
② 11月27日 井原裕先生(獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授)(大日本製薬)

第38回日本社会精神医学会(東京)

下記の通り開催いたします。多数の皆さまのご参加をお待ちしています。
会期:2019年2月28日(木)・3月1日(金)
会場:京王プラザホテル(東京・新宿)
大会長:三村將(慶應義塾大学医学部精神神経科学教室教授)
事務局長:新村秀人(慶應義塾大学医学部精神神経科学教室専任講師)
テーマ:「幸福な長寿社会をめざして」
ホームページ:http://jssp38.umin.jp/
演題募集:2018年8月31日(金)~10月31日(水)

研究活動

現在以下のような研究を行っています。

  • 社会機能を回復させる精神科リハビリテーション・プログラムの開発:通常の外来デイケアで行っている全員一律のプログラムではなく、①認知機能(特に発散的思考)に着目したプログラム、②個別の特性に配慮し就労を目指す機能分化プログラム、③入院中の急性期からリハビリテーション介入を開始する早期プログラム を開発し、社会機能改善の効果検証を行っています。
  • 精神科地域ケアの長期コホート研究:長期入院していた患者の地域移行プロジェクトが15年を超えました。その長期予後をコホートとして追跡し、精神科地域ケアのアウトカムを検証しています。
  • 精神病発症から専門的治療開始までのタイムラグ(DUP)を短縮することが求められています。精神科病院とクリニックでDUPは異なるのか、10年間でDUPは変化したのかなどの検討を行い、わが国における早期介入の可能性について検討しています。
  • 初回エピソード精神病のプロスペクティブ・スタディ:若年者に特化したデイケアにおいて、精神病危険状態(ARMS)や初発統合失調症に対する治療的介入とその検証を行っています。
  • 精神障害者のサクセスフル・エイジング:一般人口の高齢化とともに、精神障害者の高齢化も見逃せない現実です。高齢精神障害者の心身・認知機能がケアのニーズにどのように関連しているのか、精神障害者の幸せな老いとは何かについて考えています。
  • 超高齢者のメンタルヘルス:都内の自治体と共同し、85歳・95歳以上の超高齢者のメンタルヘルスについて、心理社会的要因・ポジティブ心理学にも注目し、地域ベースのコホート調査を行っています。
  • 震災とメンタルヘルス:東日本大震災の震災から8年が経ちました。被災地の精神科医療についてフィールドワークを行いながら、震災がメンタルヘルスに与える影響について長期的な視点から検討しています。
  • 精神科臨床倫理:精神障害者の治療同意に関わる判断能力についてどう考えるのかなど、精神科医療を行っていく上で課題となる倫理的な問題の検討を行っています。

地域における包括的治療の取り組み

イアン・ファルーン教授(1945-2006年)の提唱した、エビデンスに基づいた最適な治療である統合型地域精神科治療プログラムOTP(Optimal Treatment Program)にのっとり、わが国での先進的な取り組みとして、以下のような臨床実地活動を行っています。

  • NPO法人みなとネット21:東京都港区をキャッチメント・エリアとして、多職種チームのアウトリーチによる認知行動療法を用いた個別的支援を提供しています。この活動に対して、2003年6月日本精神神経学会より精神医療奨励賞を授与されました。
  • ささがわプロジェクト:福島県郡山市のあさかホスピタルの協力のもと、精神科病院に長期入院していた多数の患者さんが、グループホームやアパートで地域生活を送るにあたり、OTPに基づいた治療や就労支援などのサポートを提供しています。プロスペクティブ・スタディも同時に行っています。本プロジェクトに対して、2016年6月日本精神神経学会より精神医療奨励賞を授与されました。
  • イルボスコ:東邦大学医学部精神神経医学講座と協力し、初回エピソード精神病や精神病発症危険状態(ARMS)の診断・治療を行うとともに、若年者に特化したデイケアにおいて、認知機能リハビリテーション・プログラムの開発も行っています。

当研究会の業績(書籍、論文、学会発表)

社会精神医学研究会 業績集

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