教授のご挨拶

「分子から社会までつなぎ、一人ひとりのこころを健康にする」
慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 教授 内田裕之

内田裕之 令和5年4月より、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の教授を務めております内田裕之です。当教室は1921年に創設され(初代教授 下田光造)、私が8代目の教授になります。

当教室のホームページを訪れた方は、精神医学またはひとのこころに関心がある方でしょう。ひとの“こころ”は、複数の視点で理解する必要があります。約1000億個の脳細胞を構成する分子、細胞、組織、脳という臓器、個人、集団・社会との相互作用。こころの状態を良くするためには、これらの要素を十分に理解しなくてはなりません。私たちは分子から社会まで見据え、広い視野を持ち、一人でも多くの人のこころに健康をもたらすため、治療学を軸に、診療、研究、社会活動に取り組んでいます。特に、精神疾患の病態生理解明と新規治療法の開発を強力に推進します。また、たとえ病気を持っていたとしても、その人らしく生きていける社会の実現を目指しています。

当教室は多様性を大切にしています。研究室紹介のページにある通り、多岐にわたる専門性を有する研究室・グループがあり、互いに連携しながら活動していることが特徴です。この多様性こそが、当教室の力の源泉と言えるでしょう。また、精神医学の課題は一朝一夕に解決することが困難なものも少なくなく、世代にわたって取り組み続ける必要があります。私たちは、精神医学の持続的な発展のために、後進の育成に全力で取り組んでいます。それは単なる押し付けの教育ではなく、「半学半教」の精神で先輩と後輩が互いに学び合うものです。この自由な雰囲気が、次のブレイクスルーにつながると信じています。

慶應義塾は1858年に、福澤諭吉が江戸の築地鉄砲洲に開いた蘭学塾から始まりました。江戸時代から明治時代にかけての怒涛の変革期の中、社会の課題を自ら見つけ、問いを立て、解決する数多の人材が慶應義塾から輩出されました。私は、今も当時と似たような社会の大変革のうねりの中にあるように思えてなりません。とてもエキサイティングな時代に生きていると言えるでしょう。臨床、研究、教育、社会活動といったさまざまな分野の最前線で課題の解決に取り組み、人類の福祉の向上に貢献するため、教室員一同で楽しみながら邁進する所存です。

略歴

平成10年慶應義塾大学医学部卒業、平成10年同精神・神経科学教室入局、平成18年同博士課程修了、博士号取得、平成18年トロント大学医学部精神科、平成21年慶應義塾大学医学部精神・神経科教室、令和5年4月より現職。

所属学会

日本精神神経学会(専門医・指導医)、日本臨床精神神経薬理学会(理事・専門医・指導医)、日本神経精神薬理学会(評議員)、日本うつ病学会、日本統合失調症学会(評議員)、アメリカ神経精神薬理学会、国際統合失調症研究学会、国際神経精神薬理学会(評議員)

学術誌

Pharmacopsychiatry (editor)、Psychiatry and Clinical Neurosciences (field editor)、Psychopharmacology (advisory editor)、CNS Spectrums (editorial board member)、Therapeutic Advances in Psychopharmacology (editorial board member)、Keio Journal of Medicine (editorial board member)、Neuropsychopharmacology Reports (field editor)、Journal of Clinical Psychopharmacology (editorial board member)