Multidisciplinary Translational Research Lab(精神病態生理学研究室)

Lab News

(2018年4月)
【論文】
主任研究員の野田がトロント大学留学中に実施した治療抵抗性うつ病に対してシーターバースト刺激を用いたpatterned rTMSと従来型rTMSの有用性を比較した非劣性試験において、シーターバースト刺激の非劣勢性を証明しました。
“Effectiveness of theta burst versus high-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation in patients with depression (THREE-D): a randomised non-inferiority trial” Blumberger DM, Vila-Rodriguez F, Thorpe KE, Feffer K, Noda Y, Giacobbe P, Knyahnytska Y, Kennedy SH, Lam RW, Daskalakis ZJ1, Downar J. Lancet. 2018 Apr 28:391:1683-1692.

MTRラボ3本目・4本目の論文がアクセプトされました!
尾久守侑先生が精神疾患とキヌレニン経路には、神経炎症やグルタミン神経系を背景とした密接な関係があることが分かってきており、今回、うつ病患者におけるキヌレニン経路の代謝産物の変化に関するメタアナリシスを報告しました。
‟Kynurenine Pathway in Depression: A Systematic Review and Meta-analysis” Ogyu K, Kubo K, Noda Y, Iwata Y, Tsugawa S, Omura Y, Wada M, Tarumi R, Plitman E, Moriguchi S, Miyazaki T, Uchida H, Graff-Guerrero A, Mimura M, Nakajima S. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 2018 Mar 30;90:16-25.

和田真孝先生が、ナルコレプシーの神経画像研究について系統的総論を発表しました。
“Neuroimaging Correlates of Narcolepsy with cataplexy: A Systematic Review” Wada M, Mimura M, Noda Y, Takasu S, Plitman E, Honda M, Natsubori A, Ogyu K, Tarumi R, Graff-Guerrero A, Nakajima S. Neuroscience Research, 2018 Mar 23

慢性期統合失調症の脳内グルタミン酸濃度を1H MRSを用いて検証したトロント大学との共同研究を発表しました。
“Striatal neurometabolite levels in patients with schizophrenia undergoing long-term antipsychotic treatment: A proton magnetic resonance spectroscopy and reliability study.” Plitman E, Chavez S, Nakajima S, Iwata Y, Chung JK, Caravaggio F, Kim J, Alshehri Y, Chakravarty MM, De Luca V, Remington G, Gerretsen P, Graff-Guerrero A. Psychiatry Res Neuroimaging. 2018 Mar 30;273:16-24.

治療を受けていない統合失調症における脳内グルタミン酸濃度について検証したメタアナリシスをトロント大学との共同研究という形で報告しました。
“Neurometabolite levels in antipsychotic-naïve/free patients with schizophrenia: A systematic review and meta-analysis of 1H-MRS studies.” Iwata Y, Nakajima S, Plitman E, Mihashi Y, Caravaggio F, Chung JK, Kim J, Gerretsen P, Mimura M, Remington G, Graff-Guerrero A. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2018 Mar 23.

【グラント】治療抵抗性うつ病に対するrTMS医師主導臨床研究に関して、帝人ファーマ株式会社と共同研究契約を締結しました(4月16日)!!

(2018年3月)
【論文】ラボ初年度に2 本目の論文がアクセプトされました。和田真孝先生が、認知予備能としての教育をアルツハイマー病理から検証しました。
"Effect of education on Alzheimer’s disease-related neuroimaging biomarkers in healthy controls, and participants with mild cognitive impairment and Alzheimer’s disease - a cross-sectional study" Masataka Wada, Yoshihiro Noda, Shunichiro Shinagawa, Jun Ku Chung, Kyosuke Sawada, Kamiyu Ogyu, Ryosuke Tarumi, Sakiko Tsugawa, Takahiro Miyazaki, Bun Yamagata, Ariel Graff-Guerrero, Masaru Mimura, Shinichiro Nakajima, Journal of Alzheimer's Disease, 2018: 63:861-869.

【グラント】我々の研究「慢性抑うつの神経生理基盤の解明とその病態に基づいた新規ニューロモデュレーション治療法の開発」がAMED(日本医療研究開発機構)「平成30年度 障害者対策総合研究開発事業」に採択されました。

(2018年2月)
【論文】MTRラボの最初のペーパーがアクセプトされました!東京都在住の95歳以上の健康な超高齢者の認知機能と背景因子との関係をまとめた実態調査です。
“Relationships between socio-clinico-demographic factors and global cognitive function in the oldest old living in the Tokyo Metropolitan area - reanalysis of the Tokyo Oldest Old Survey on Total Health”. Yoko Eguchi§, Kumiko Tasato§, Shinichiro Nakajima*, Yoshihiro Noda, Sakiko Tsugawa, Shunichiro Shinagawa, Hidehito Niimura, Nobuyoshi Hirose, Yasumichi Arai, Masaru Mimura, The International Journal of Geriatric Psychiatry, 2018 Mar 7.

はじめに-精神疾患の解明に向けて

「精神疾患にはどうしてなるのだろう?」「どのように治療をしていけばいいのだろう?」こういった臨床場面の疑問を通して、「精神疾患とは何だろう?」という命題に挑むことは、精神科臨床に携わる者に許された大義です。この信念をもとに、我々は、精緻な臨床評価、磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging: MRI)を用いた多様な神経画像モダリティと経頭蓋磁気刺激法(transcranial magnetic stimulation: TMS)と高解像度脳波計(high-resolution electroencephalography: EEG)を組み合わせたTMS-EEGによる神経生理モダリティ、さらにはデータ・マイニングを用いて、精神疾患のバイオマーカーの同定、新たな診断補助技術の開発、治療効果発現機序と治療転帰予測、早期発見と予防、より効果的な新規治療法といったテーマに取り組んでいます。

巨人の肩に乗っていることを十分に享受しつつ、これらの研究活動を通して集合知に貢献することによって、精神疾患の病態解明を追究しています。また、“Chance favours the connected mind”の精神を大切に、国内外の研究者とのコラボレーションとデータ・シェアリングを積極的に行っています。研究に対するモチベーションの源泉は精神疾患への興味に他なりません。一条の湧水が大河となるように、各々の関心が精神疾患を解明する強力な駆動力となる、と我々は信じています。研究活動への参加、共同研究のご相談、定例勉強会への参加に関心のある方は是非ご連絡をください。

研究室について

当研究室は、中島振一郎(Shinichiro Nakajima)主任研究員(MRI/MRS神経画像研究担当)と野田賀大(Yoshihiro Noda)主任研究員(TMS-EEG神経生理研究、rTMSニューロモデュレーションによる新規治療開発研究担当)により運営されています。

私たちは、様々な精神神経疾患を対象に生物学的な方法を用いて脳神経の機能および構造・化学的特徴を評価し、各精神神経疾患の病態生理の解明を目指しております。具体的なモダリティとしては、神経生理機能に関しては経頭蓋磁気刺激法(TMS)と高解像度脳波計(EEG)を組み合わせたTMS-EEG、脳構造や神経結合性に関しては磁気共鳴画像(MRI)、化学的特徴に関してはMRスペクトロスコピー(MRS)を用いて、精神神経疾患の定量的研究を実施しております。

研究アプローチとしては、1)精神神経疾患の病態メカニズムやバイオマーカーの同定を目指した神経科学的研究、2)それらの知見を精神神経疾患のバイオタイピング等の生物学的診断補助に応用するトランスレーショナル研究、さらには、3)各病態に対応した治療法の開発の3つを現時点では想定しています。近い将来は、基礎研究や工学系のラボとのコラボレーションにより、精神神経疾患におけるより精密な診断や、より効率的な治療を実装するための医療技術開発にも参画して参りたいと考えております(下図参照)。

研究プロジェクト紹介

  1. (1) 治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン研究(慶應精神神経科・トロント大学精神科)
  2. (2) MRI・MRSを用いた治療抵抗性統合失調症の病態解明研究(UMIN000024392: 慶應精神神経科・トロント大学精神科・駒木野病院)
  3. (3) 疾患横断的なTMS-EEG神経生理研究(UMIN000028863: 慶應精神神経科)
  4. (4) 治療抵抗性うつ病に対する急性期rTMS臨床研究(UMIN000028855: 慶應精神神経科・トロント大学精神科)
  5. (5) 治療抵抗性うつ病に対する維持期rTMS臨床研究(UMIN000028855: 慶應精神神経科)
  6. (6) 疾患横断的な包括的メタボローム研究(UMIN000029406: 慶應精神神経科・医化学教室・昭和大学・下総精神医療センター)
  7. (7) 術後せん妄の生物学的予測因子に関する研究(UMIN000029814: 慶應大学病院)

今後、企業との共同研究や連携による画期的なプロジェクトも徐々に実施していく予定です。当研究室では、患者さんやご家族をはじめとした多くの方々の協力を得ながら、精神神経疾患の解明、ひいては患者さんの医療の質の改善に向けて、様々な研究機関・部局・専門家と積極的に連携し、精神科のフロンティアに挑戦していく所存です。

プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピーの例

TMS誘発脳波におけるEvent-related perturbation spectrumの一例

ラボメンバー

<主任研究員>

中島 振一郎 (特任講師)
野田 賀大(特任講師)

<大学院生>

D2: 垂水 良介(駒木野病院/慶應義塾大学精神・神経科学教室)
D1: 尾久 守侑(下総精神医療センター/慶應義塾大学精神・神経科学教室)

<研究員>

増田 史(特任助教・ポスドクフェロー)
新井 脩泰(専修医)
和田 真孝(専修医)
三村 悠(専修医)
津川 幸子(医学部5年)
本多 栞(政策・メディア研究科修士課程 M1)
越智 涼(環境情報学部3年)
野見山 菜摘(環境情報学部3年)
松下 佳鈴(環境情報学部2年)

<客員研究員>

宮崎 貴浩(シニアフェロー)
北畑 亮輔(老寿サナトリウム)

共同研究者

杉浦 悠毅(慶應義塾大学医学部医化学教室専任講師)
藤井 進也(慶應義塾大学環境情報学部専任講師)
北城 圭一(理化学研究所脳神経科学研究センター・CBS-トヨタ連携センター・脳リズム情報処理連携ユニット連携ユニットリーダー)
高橋 宏知(東京大学先端科学技術研究センター講師)
中谷 裕教(東京大学大学院総合文化研究科進化認知科学研究センター助教)
松吉 大輔(早稲田大学理工学研究所講師)
品川 俊一郎(東京慈恵会医科大学精神医学講座講師)
押淵 英弘(東京女子医科大学神経精神科講師)
松井 健太郎(東京女子医科大学神経精神科助教)

2018年:自主学習学生

黒宮 みの里(医学部4年)
西 佑理(医学部4年)
齋藤 直宏(医学部4年)
森田 真司(医学部3年)
嵯峨濃 瑞(医学部3年)

2017年:自主学習学生

飯森 崇(医学部4年)
大森 祐貴(医学部4年)
津川 幸子(医学部4年)

津川幸子さんが、2017年度の自主学習表彰学生に選ばれました!
2018年1月16日(火)に医学部長より表彰状および副賞が贈呈されました!

ラボ獲得グラント

・日本学術振興会 科学研究費 若手研究(A) 2016-2017
・日本学術振興会 科学研究費 若手研究 2018-2020
・日本学術振興会 基盤研究B 2018-2021
・武田科学振興財団 医学系研究奨励 2016, 2017
・内藤記念科学奨励金・研究助成 2016
・臨床薬理研究振興財団研究奨励金 2016
・明治安田心の健康財団医学研究助成 2017
・ひと・健康・未来研究財団研究助成 2017
・三井生命厚生財団研究助成 2017
・ヘルス・サイエンス・センター財団研究助成 2017
・先進医薬研究振興財団 2017
・上原記念生命科学財団特定研究助成金 2018-2020
・AMED障害者対策総合研究事業 2018-2021

研究セミナー

本研究室では月に1回程度、研究会を行っております。随時、脳画像の各種モダリティの解析トレーニングも行っておりますので、こちらもご参加ください。参加ご希望の方は下記の連絡先までお問い合わせください。

2017年

2/15(水)高宮彰紘先生「ECTの効果発現機序について」

3/8(水)藤井進也先生(環境情報学部)「音楽神経科学のフロンティア」

4/6(木) Fernando Caravaggio先生(トロント大学)「History of Dopamine PET」 

4/12(水)高田則雄先生「光遺伝学的機能的MRI」

5/19(金)野田賀大先生「TMS脳波をめぐる冒険」

6/15(木)尾久守侑先生 「精神疾患とキヌレニン経路」

7/6(木)竹内啓善先生 「統合失調症に対する抗精神病薬治療の全て」

7/20(木)杉浦悠毅先生(医学部医化学教室)「メタボローム解析による血中「代謝分子」疾病マーカーの探索」

8/18(金)「理工学部・環境情報学部・医学部共同安静時MRI解析トレーニング」

8/24(木)岩田祐輔先生「統合失調症とグルタチオン」

9/6(水)品川俊一郎先生(東京慈恵会医科大学)「精神科医のための前頭側頭型認知症入門」

10/5(木)野田賀大先生「TMS-EEGを用いた精神疾患研究」

10/27(金)鶴身孝介先生(京都大学)「ギャンブル障害の脳画像研究」

11/10(金)新井脩泰先生 「せん妄」

11/30(木)高畑圭輔先生 / 佐野康徳先生 / 山本保天先生(放射線医学総合研究所)「精神症候の背景病態について:器質性精神疾患からのアプローチ」

2018年

1/19(金)園田真樹先生「てんかん俯瞰」(横浜市大)

1/31(水)「ナルコレプシー総論」
松井健太郎先生(女子医大)「ナルコレプシーの臨床」
和田真孝先生「ナルコレプシーの神経画像」

2/2(金)宮崎貴浩先生「0から始めるR(周波数解析や基礎統計)」

2/14(水)宮田淳先生(京大)「統合失調症のコネクティビティ」

2/28(水)垂水良介先生「治療抵抗性統合失調症」

3/15(木)竹内啓善先生「遅発性ジスキネジアの症状・診断・機序・治療」

3/16(木)土元翔平先生(慶應義塾大学理工学部)「結合性MRI解析トレーニング」

4/2(月)Ariel Graff先生(トロント大学)「Link between Depression and Dementia」

4/19(木)藤井進也先生(環境情報学部)「統合失調症の音楽機能に関するMRI研究−中間報告」

4/25(水)Eric Plitman先生(トロント大学)「Using Proton Magnetic Resonance Spectroscopy to Study the Glutamatergic System in Patients with Schizophrenia

5/2(水)宮崎貴浩先生「定量的脳波解析トレーニング」

5/30(水)髙堂裕平先生(放医研)「脳疾患におけるMRSを用いたトランスレーショナルリサーチ:マウスからヒトまで」

6/29(金)平野羊嗣先生(九州大学精神科)「統合失調症における音刺激誘発脳波および自発ガンマ活動(仮)」

7/13(金)北城圭一先生(理研BSI)「TMS-EEGを用いた脳機能における神経活動の振動同期ダイナミクスの因果的役割の解明(仮)」

現在、中島・野田ラボの研究生および大学院生を募集しております。理工学部の学生さんや他大学に所属している方であっても、当研究室に興味のある方は大歓迎ですので、是非下記の連絡先にメールを頂けますと幸いです。

連絡先

リサーチ・アシスタント:富樫敦子(Email: togashinobuko0713@gmail.com